【エンジョイブックス】最後の一編でゾッとした。宮部みゆき『人・で・なし』の短編4編を紹介
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(本書は既刊短編の傑作選のため該当なし)
【エンジョイブックス】最後の一編でゾッとした。宮部みゆき『人・で・なし』の短編4編を紹介
こんにちは。サルーテの山本です。
このコーナー「エンジョイブックス」では、一宮市の文正堂書店・平野さんと一緒に、おすすめの本をご紹介していきます。
今回取り上げるのは、宮部みゆきさんの『人・で・なし』。講談社文庫の新シリーズ「STORY IN POCKET」の一冊で、宮部さんの現代ミステリー短編が4編収められています。価格は1冊550円。どの話にもミステリーの要素があるのに味わいはまったく違い、最後の表題作では思わずゾッとさせられました。

長雨の続いた9月に
収録したのは9月です。この日は晴れましたが、それまでは雨の日がずっと続いていました。梅雨って秋だったっけ、と思ってしまうほどの長雨です。

愛知県でも大雨があり、道が川のようになって家から出られないような日もありました。前回お話しした千葉の豪雨と同じようなことが、身近でも起きた形です。
雨が続くと、どうしても気持ちがふさぎがちになります。そんなときに少しでも気晴らしになればと思い、今回の一冊を選びました。
『人・で・なし』とは?宮部みゆきの現代ミステリー短編4編を収めた一冊
『人・で・なし』とは、宮部みゆきさんの現代ミステリー短編4編を収めた文庫本です。2026年7月15日に講談社文庫から発売されました。
講談社文庫が2026年4月に始めた新シリーズ「STORY IN POCKET」の一冊で、人気作家の短編をセレクトし、1冊550円で読み切れるサイズにまとめています。前回ご紹介した東野圭吾さんの『小さな故意の物語』と同じシリーズです。

1話は30ページほどから、長くても70〜80ページほど。すぐに読み終わるのに、ちゃんと展開があってオチもあり、話がひっくり返るような場面もあります。この薄さによくここまで詰め込めるなと感心しながら、最後まで飽きずに読みました。
収録されている4編のあらすじ
平野さんに、4つのお話を簡単に紹介していただきました。

サボテンの花
1993年に文春文庫から刊行された『我らが隣人の犯罪』に収録されている短編です。舞台はある小学校。テーマを自分たちで決めていい、原則自由のはずの卒業研究発表会で、6年1組の子どもたちが選んだのは「サボテンの超能力」でした。なんですかそのふざけたテーマは、と大人たちは憤慨します。子どもたちの気持ちを大切にしたい教頭先生の心配をよそに、騒動を巻き起こしながらもぶれない6年1組。サボテンに超能力はあるのか、そもそも子どもたちはなぜそのテーマを選んだのか、というお話です。
うそつき喇叭
1997年に新潮文庫から刊行された『淋しい狩人』に収録されている短編です。下町で田辺書店を営むイワさんのもとには、週末になると孫の稔が手伝いに来てくれます。高校生ながら夜遊びを続ける稔に両親は悩んでいて、イワさんが稔と話し合っても、すんなり解決とはいきません。そんな田辺書店のいつもの日々が、ある日の万引きをきっかけに一気に動き出します。盗もうとした本と少年の言動から、イワさんは少年がSOSを出していることに気づき、稔のアイデアも借りながら解決へと導いていきます。
十年計画
2001年に文春文庫から刊行された『人質カノン』に収録されている作品です。たまたま乗ったタクシーで女性運転手と何気ない会話を交わしていたはずが、彼女の身の上話は、過去の男性への壮大な殺人計画の話へと変わっていきます。彼女は本当にそれを実行したのか。そもそも、その話は本当なのか。
人・で・なし
締めくくりとなる表題作は、2019年に講談社文庫から刊行された『宮辻薬東宮』に収録されています。行きつけの居酒屋で、職場の先輩と同僚の退職騒動について話していた主人公は、話の流れで、これまで語ることのなかった自分の過去を打ち明けることになります。母が1枚だけ買った宝くじが当たり、家族会議を重ねて購入したマイホーム。ところが、その家はなぜか写真に写らない。まるで家そのものに意思があるかのような、前代未聞の家の幽霊話の先に、まさかの結末が待っています。
宮部みゆきとはどんな作家?ジャンルを超えて書き続ける人気作家
宮部みゆきさんは1960年、東京都生まれ。OLを経て、1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、作家デビューしました。
その後も吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、日本SF大賞と、ジャンルの違う賞を次々に受賞し、1999年には『理由』で第120回直木賞を受賞しています。受賞歴や候補作は、挙げればきりがありません。

ミステリーから時代小説、SF、ホラー、怪談まで、作品のジャンルは多岐にわたります。平野さんにとっても好きな作品が多い作家さんで、入口からは想像できないドラマが展開して、驚かされたり感動させられたりする。宮部さんはそんなマジックを使う人だと思っている、と話してくれました。
幼い頃には、落語好きのお父様から怪談噺を聞かされ、映画好きのお母様からは海外映画の話を語って聞かされていたそうです。下町を舞台にした作品が多いことも含め、育ってきた環境のいろいろな要素が作品に取り入れられているのかもしれません。
なぜ表題作「人・で・なし」でゾッとするのか
4編すべて読んでみて、僕が一番好きだったのは、最後に収録されている表題作の「人・で・なし」です。

ミステリーの要素がありながら、宮部さんならではのホラー的な書き方がされていて、読んでいて本当にゾッとしました。ちょっと怖い話なのかなと思って読み進めると、ミステリーでもあって、最後にはどんでん返しが待っている。その展開がとても面白かったです。
平野さんも、これで終わるのかなと思っていたところからの展開に驚かされたそうです。
4編とも味わいが違う。宮部作品の巧みさ
4編はそれぞれ作風が違います。SFとまではいかないけれど、こんなことが本当にあるのかと思うような少し不思議な要素があって、それが物語にうまく組み込まれている。ミステリーもあって、最後にはきれいにまとまっていく。話の入口からの広がり方が本当にすごいと思います。
1作目の「サボテンの花」も、最初は普通の学校の話かなと思って読み始めたら超能力の話になっていき、そこから、まさかこんな気持ちにさせてくれるお話だったのか、というところまで連れていかれます。展開が非常に巧みな作品集です。
宮部作品で本好きになった。平野さんと山本のおすすめ
平野さんが宮部さんの作品で一番入り込んで読めたのは『ソロモンの偽証』だそうです。かなりのボリュームがありますが、次へ次へと止まらない面白さがあり、この作品で宮部さんを好きになったとのことでした。

僕はその分厚さに、まだ手を出せていません。ただ、読み始めたら止まらないと聞いて、読んでみようかなと思っています。
僕が初めて宮部さんの作品を読んだのは中学生の頃です。新潮文庫の100冊で宮部さんの作品が取り上げられていたのがきっかけで、『魔術はささやく』や『レベル7』、『理由』あたりを夢中で読みました。本好きになったきっかけと言っていいほどです。今回久しぶりに読んで、相変わらずすごいなと思いました。
『人・で・なし』はどんな人におすすめ?
手に取りやすいサイズなので、ちょっとした隙間時間に1編ずつ読むのもいいですし、1〜2時間で一気に読み切っても満足感があります。難しい表現や分かりにくい言い回しも出てこないので、小学校の中学年、高学年くらいから大人まで、幅広く楽しめる作品集です。

宮部みゆきさんの作品をこれから読んでみたい方の入口にも、ぴったりの一冊だと思います。
エンジョイブックスでは、面白い本、話題の本をどんどん紹介していきます。チャンネル登録、高評価、感想のコメントもよろしくお願いします。
『人・で・なし』についてよくある質問
『人・で・なし』はどんな本ですか?
宮部みゆきさんの現代ミステリー短編4編を収めた文庫本です。講談社文庫の新シリーズ「STORY IN POCKET」の一冊として、2026年7月15日に発売されました。
収録されている作品は?
「サボテンの花」「うそつき喇叭」「十年計画」「人・で・なし」の4編です。いずれも、過去に別の短編集やアンソロジーに収録された作品です。
価格はいくらですか?
1冊550円(税込)です。
STORY IN POCKETとは何ですか?
講談社文庫が2026年4月に始めた新シリーズです。人気作家の短編をセレクトし、1冊550円で読み切れるサイズにまとめています。
子どもでも読めますか?
難しい表現や分かりにくい言い回しは出てこないので、小学校の中学年、高学年くらいから読めると思います。
書籍情報
書名:人・で・なし
著者:宮部みゆき
出版社:講談社(講談社文庫「STORY IN POCKET」)
発売日:2026年7月15日
定価:550円(本体500円)
ISBN:978-4-06-543928-9
収録作:サボテンの花/うそつき喇叭/十年計画/人・で・なし
この本のご購入・お取り寄せは、真清田神社のすぐ南にある文正堂書店へ。
※書籍の内容・感想は出演者個人の見解です。
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Professional
平野静江
文正堂書店 はじめに 一宮市の真清田神社近くにある文正堂書店。明治時代の創業から4代にわたって地域の人々に愛され続けてきた老舗書店です。 現在は4代目の弟さんが代表を務め、平野さんが取締役として店舗運営に携わっています。今回は平野さ […] プロフィールを見る →


文正堂書店・平野さんより
宮部みゆきの現代ミステリー短編4編を収録。どれも味わいが違い、最後の表題作でゾッとさせられます。1冊550円、隙間時間にも読み切れる一冊。