- TOP
- プロフェッショナル紹介
- 明治創業、地域に愛され続けて4代目 文正堂書店が大切にする「人と本をつなぐ」想い
2025.10.02
明治創業、地域に愛され続けて4代目 文正堂書店が大切にする「人と本をつなぐ」想い
はじめに
一宮市の真清田神社近くにある文正堂書店。明治時代の創業から4代にわたって地域の人々に愛され続けてきた老舗書店です。
現在は4代目の弟さんが代表を務め、平野さんが取締役として店舗運営に携わっています。今回は平野さんに大型書店やネット書店が台頭する中、町の本屋さんならではの価値を追求し続ける文正堂書店の取り組みについてお話を伺いました。

創業から現在まで 4代にわたる歴史
――創業当時はどのような様子だったのでしょうか?
創業時は書店ではなく商店だったそうです。度量衡器(どりょうこうき)といって、長さ・体積・重さをはかる器具を主に販売していて、その店内の、一角で書物も販売していた商店が文正堂書店の始まりです。商店の頃は販売できる出版物が少なく、貴重だったので一角で十分だったのですが、戦後になり出版物も増えてきたということもあり、本を扱う書店へ移行しました。当店は教科書も扱っているのですが、当時はリアカー(わかります?)で小学校まで運び、納品ではなく、販売してたようです。
平屋だった商店から建て替えを経て現在の建物になってます。建て替える前は床から天井までの書棚にびっしり本が陳列、というか詰め込んでる感じでした(笑)
ベビーカーや車椅子が通れない通路もあるほど、本を置けるだけ置くというスタイルでしたので、
今はある程度空間を大事にしたお店作りに努めています。

地域密着型の品揃えとサービス
――現在はどのような本を中心に置かれているのですか?
地元のお客さまが多く、且つご商売をされているお客さま(美容院など)が多いので定番の週刊誌や雑誌は置くようにしています。
コミックはスペースの問題から、新刊とメディア化されて話題になっているものをメインに置くようにしていますね。
児童書や絵本コーナーは可愛らしい空間にして子どもたちが入りたくなるような雰囲気作りをしています。
児童書や絵本の販売数は、書籍・雑誌・コミックの紙市場全般減少傾向のなか比較的底堅く、健闘しています。
15歳未満の人口は減少し続けているにもかかわらずです。コロナ禍での巣ごもり需要や、自治体などの読書活動の推進、情操教育への意識の高まりなど様々な要因があるのかなと思います。
子どもだけでなく、大人も楽しめる作品も取り揃えていますが、ご所望の本が店頭にないときは、お取り寄せの対応もしておりますのでお気軽にお尋ねいただければと思います。

大型店にはできないサービス
――大型書店との違いはどこにあると思いますか?
一番の違いは距離の近さですね。大型店さんだと肝心な時に店員さんが見当たらないことが多いですが、うちはもう入ったらすぐに声をかけさせていただきます。「〇〇の新刊入りましたよ」みたいな感じで。
お客さんの中には「探している本があるけれど、どう検索していいかわからない」という方も多いんです。そういう時に、距離が近いので気軽にアドバイスできるのが町の本屋の強みだと思います。
実際、地域密着すぎるかもしれませんが、品切れで一般の書店にはない本を、「手数料を払うからAmazonで頼んでおいて欲しい」と頼まれることもあります(笑)。10%の手数料をいただいて、Amazonで購入してお客さんに渡すということもしています。クレジットカードを使いたくない方や、ネットでの個人情報入力が苦手な方のお助けサービスとして機能しています。

静かで相談しやすい環境づくり
――お店の雰囲気について教えてください
お客さんからは「ここは静かでいいですね」とよく言われます。大型店だと人がたくさんいて賑やかですが、それが気になって本も探せないというお客さんもいらっしゃいます。
うちは本当に話しかけやすい雰囲気を心がけています。レストランで例えると、大きなレストランのテーブル席ではなく、シェフが目の前で作ってくれるカウンター席のような感覚です。一人ひとりのお客さんとしっかり向き合えるのが、町の本屋の良さだと思います。
変化する時代の中で
――ネット書店やデジタル化が進む中、どのように感じていますか?
正直、Amazonさんなどの便利さには驚かされます。翌日、時には当日に届くなんて本当にすごいことです。できるべくしてできているサービスだと思います。
ただ、本というものに関して言えば、ネットだけでは得られない価値があると思います。本の相談をしたり、プロの知識を聞いたり、「こんな本もありますよ」という提案をしたり。膨大な量の新刊が毎日出版される中で、お客さんに教えてもらうこともありますし、逆にお客さんが知らない良書をご紹介することもあります。

今後大切にしたいこと
――これからも大切にしていきたいことは何ですか?
コミュニティが大事だと思います。本を読むことで想像力が広がる、書き立てられるという体験は、映像だけでは得られないものです。そういう部分に興味を持ってもらうためには、マイスター的な人が必要だと思うんです。
量販店では基本的にセルフサービスですが、うちのような店では「どうしたらいいかわからない」という時に気軽に相談していただけます。そういう存在でありたいですね。
最後に
――読者の皆さんにメッセージをお願いします
本当に気負わずに来ていただける書店を目指しています。わからないことがあった時に、ただ「出版社にお問い合わせください」ではなく、プラスアルファで「取りましょうか」「いつなら入りますよ」とお返事できるよう、スタッフ全員で心がけています。
小さいゆえに「入りづらい」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当に気軽にお越しいただきたいです。本屋特有の匂いが苦手という方もいらっしゃるかもしれませんが(笑)、そんなことは気にせずに。
量販店みたいにただ通り過ぎるのではなく、「行きたいと思って行ける店」になりたいと思っています。昔のように立ち読みしたら「はたきをかけられる」なんてこともありませんから(笑)、本当にお好きにどうぞという感じです。ぜひ気軽にお越しください。

文正堂書店 本店
代表:平野さん(取締役)
所在地:愛知県一宮市真清田1-1-4
電話番号:0586-72-2605
営業時間:9:00~20:00(但し祝日は10:00~19:00)
定休日:日曜定休
創業:明治時代
特徴:4代続く老舗書店、地域密着型サービス、絵本コーナー充実