本屋さんが選ぶ本 精神 · Mental サルーテ編集部

【エンジョイブックス】読み終わると心が丸くなる。青山美智子『月の立つ林で』をご紹介

Book

月の立つ林で

2023年本屋大賞 ノミネート(第5位)

【エンジョイブックス】読み終わると心が丸くなる。青山美智子『月の立つ林で』をご紹介

青山 美智子 / ポプラ社

文正堂書店・平野さんより

本屋大賞5年連続ノミネートの青山美智子が贈る連作短編。ポッドキャストと月が、5人の心をそっと繋いでいきます。読み終わると心が丸くなる一冊。

皆さんこんにちは。サルーテの山本です。

このコーナー「エンジョイブックス」では、一宮市の文正堂書店・平野さんと一緒に、おすすめの本をご紹介していきます。

今回ご紹介するのは、青山美智子さんの『月の立つ林で』(ポプラ社)。読み終わった後、心のトゲトゲ感がなくなって、丸い気持ちになれる。そんな優しい読後感の一冊です。

梅雨の時期と書店の意外な関係

収録したのは6月。東海地方は梅雨入りしていましたが、この日はいい天気でした。

天気予報では「必ず帳尻を合わせて梅雨らしくなる」と言われているそうで、晴れが続いた分、後でまとまった雨が降るのではないかという話に。ゲリラ豪雨のような降り方は災害の心配もあるので、できれば早めに少しずつ降ってほしいところです。

平野さんに、書店にとって梅雨はどうなのかを伺ってみました。

駅の中にある書店ならまだしも、わざわざ足を運んでもらう立地にある書店では、雨が降ると人の足が遠のいてしまうそうです。正直なところ、空梅雨の方がありがたいとのこと。文正堂書店さんも真清田神社のそばという、まさに足を運んでいただく場所にあります。

そしてもう一つが湿度の問題。本は湿度が高いとページが波打って曲がってしまうため、店内の空調を整えて湿度が上がらないよう工夫しているそうです。書籍にとって湿度が大敵だというのは、言われてみれば納得です。

梅雨の時期と書店の意外な関係

本屋大賞の常連作家・青山美智子さんとは

今回選んだのは、前回に引き続き本屋大賞にちなんだ一冊です。

青山美智子さんは、2021年から5年連続で本屋大賞にノミネートされている作家さん。ノミネートされるだけでもすごいことですが、5年連続というのはなかなか聞かない記録です。

番組内で挙がった順位は以下の通りです。

『お探し物は図書室まで』で2位、『赤と青とエスキース』で2位、今回ご紹介する『月の立つ林で』で5位、『リカバリー・カバヒコ』で7位、そして今年発売の新刊で5位。

毎年必ず話題になる作家さんというのは、本当にレアな存在です。それだけ読者を引き込む力があるということなのでしょう。

青山美智子さんのプロフィール

気になって調べてみたところ、青山美智子さんは1970年生まれ、愛知県のご出身。現在は横浜市にお住まいだそうです。

シドニーの日経新聞社で記者として勤務され、オーストラリアで2年間生活。日本に帰国後は出版社の編集者を経て、執筆活動に入られました。

インタビューで印象的だったのは、昔から映画やドラマの主人公ではなく、その脇にいる人、画面に映っていないはずの人、セリフのない人の心の中がどうなっているのかが気になっていた、という言葉。

記者や編集者という来歴と、そうした視点を持っているからこそ、あらゆる世代・性別・職業の人の物語を紡ぐことができる。そしてそれを重ね合わせた奇跡の物語を作れるのだと感じました。

なぜこの作品を選んだのか

数ある作品の中から『月の立つ林で』を選んだ理由は、本の裏表紙にありました。

そこには「ポッドキャスト」というワードと、月に関する記述があったのです。

月って、みんな好きですよね。そしてポッドキャストも、最近よく耳にするワードです。

僕自身、仕事柄どうしても車での移動が多いので、ラジオ代わりにポッドキャストをよく聞いています。無料でいろんなチャンネルが聞けるのが魅力ですよね。芸人さんやタレントさんがやっているチャンネルもあれば、一般の方が自分の好きなこと、興味のあることを話しているチャンネルもあります。

平野さんは車の中ではラジオ派とのこと。運転中にテレビは視覚を奪われて危険なので、やはりラジオやポッドキャストが重宝します。

お風呂で楽しんだり、料理をしながら聞いたりする方も多いようです。また、オーディブルのようなオーディオブックで、タレントさんが名作を読み聞かせしてくれるサービスを活用している方もいます。なかなか読む時間が取れなくても、聞くことで「こういう本なんだ」と知ることができるのは嬉しいですね。

そんな「ポッドキャスト」というワードに目が留まって、読んでみようと思ったそうです。

ポッドキャスト

『月の立つ林で』のあらすじ

物語の登場人物は、それぞれ悩みや葛藤を抱えた人たちです。

長年勤めた病院を辞めた元看護師、夢を諦めきれない芸人、家族関係の変化に寂しさが募る自動車整備士、自立を願う女子高生、仕事と家庭のバランスに悩むアクセサリー作家。

うつむきがちな彼らが耳にしたのは、「タケトリ・オキナ」というポッドキャストチャンネル。毎朝7時に10分間配信される「ツキない話」は、月に関する語りだけを届けてくれます。

その「ツキない話」を聞く中で、彼らの心は少しずつ動き出し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく。

人ではなく、ポッドキャストと月という「見えない繋がり」が心を震わす小説です。

連作短編の新しいかたち

青山さんの作品には、複数の人の人生が折り重なるように展開していく連作短編が多くあります。『お探し物は図書室まで』も『リカバリー・カバヒコ』もそうですね。

ただ、これまでの作品はキーパーソンとなる「人」を軸にして様々な人の人生を絡めていくスタイルでした。

一方で『月の立つ林で』は、人ではなくポッドキャストや月という物質・現象を通じて、奇跡的な繋がりを生み出しています。青山先生ご自身も「ちょっと新しい心境」とおっしゃっていたそうです。

短編をつなげていくというのは、本当にすごい技術だと思います。全体をしっかり構成しないと破綻してしまいそうな、緻密な作りになっている気がしました。

月にまつわる豆知識が物語と絡み合う

読んでいて面白かったのが、作中に登場する月に関する豆知識です。

「ツキない話」の中で語られる月のうんちくが、単なる知識で終わらず、物語と密接に絡み合っていくのがすごいところ。「へえ」と思わされる知識が、そのまま登場人物の心情に重なっていくのです。

新月の意味

作中で繰り返し出てくるのが、新月に関する話です。

新月は「始まり」を意味する月。月の始まりであり、生まれ変わり、再生を意味するものとして、昔の人はそこに意味を見出していました。

「月が立つ」から「一日(ついたち)」という言葉が生まれた。月の初めの1日目を「ついたち」と呼ぶようになった。

こうした知識が語られる中で、登場人物たちが新しい気持ちになったり、もう一度人生を歩み出そうとしたりする。とても印象的なシーンでした。

文庫版の解説にも注目

文庫本の最後には解説がついていますが、この作品の解説がまた素晴らしいんです。

野口さんが書かれている解説を読んで、文章がうますぎると驚きました。もちろん本を出されている方なので文章力があるのは当然なのですが、それにしても素敵な解説でした。

大人になるにつれて、1ヶ月も1年もあっという間に過ぎていってしまいます。でも、そんな毎日にも月は少しずつ変わっていて、また元に戻る。姿が見えない日があっても、必ずまた見せてくれる日がやってくる。

下を向いて帰りたくなる日でも、「今日は月はどうだろう」と見上げたくなる。そう思わせてくれる一冊です。

読み終わった後、心が丸くなる

この作品のレビューを見ていると、「読んだ後は前向きになれる」「あたたかい気持ちになった」「心に寄り添ってくれているような作品」という言葉が多く見られます。

僕も読み終えたばかりなのですが、確かに読後にトゲトゲした感じがなくなって、丸い気持ちになれました。優しい読後感、という言葉がぴったりです。

全然違う話が5編収録されているのですが、薄く前の作品の人が出てきたりして、人と人との細い繋がりがずっと続いていく。そんな作品です。

この1冊を読んでいただけると、何か違った心の持ち方ができるようになるのではないでしょうか。

心が温かくなる、丸くなる。そんな作品になっていますので、皆さんもぜひ読んでみてください。

『月の立つ林で』書籍情報

タイトル:月の立つ林で

著者:青山 美智子

出版社:ポプラ社

発売年月:2022年11月

ISBN:978-4-591-17535-4

判型:四六判(188mm × 128mm)

ページ数:263ページ

主な対象年齢・学年:中学・高校・一般・シニア

本の種類:単行本

ジャンル:小説・文芸

定価:1,760円(本体1,600円)

紹介文:『木曜日にはココアを』『お探し物は図書室まで』『赤と青とエスキース』の青山美智子、最高傑作。

月の立つ林で

文正堂書店 店舗情報

エンジョイブックスにご協力いただいている、一宮市の文正堂書店さんの情報です。

店名:文正堂書店(ぶんしょうどうしょてん)

本店所在地:〒491-0043 愛知県一宮市真清田1-1-4

電話番号:0586-72-2605

FAX:0586-73-1625

営業時間

  • 月〜土曜日:9:00〜20:00
  • 祝日:10:00〜19:00

定休日:日曜日

アクセス:尾張一宮駅東口から徒歩約7分/真清田神社のすぐそば

店舗:真清田の本店、昭和の昭和店の2店舗を営業

サービス・特徴

  • 一宮市内の雑誌配達サービス承ります
  • 小学・中学・高校の教科書取扱店(高校の教科書・教材は取り寄せ対象商品、取り寄せに1週間ほど)
  • ゴールデンチャート取扱店
  • 本のことならお気軽にご相談ください

公式サイト:https://www.bunshodo.net/

文正堂書店

エンジョイブックスについて

エンジョイブックスは、サルーテの山本と文正堂書店の平野さんが、おすすめの本をご紹介していくコーナーです。

これからも、平野さんが選んだ本や、僕が選んだおすすめの本をどんどん紹介していきますので、チャンネル登録、高評価、感想のコメントなどもお待ちしています。

それではバイバイ。

サルーテブランドについて

サルーテは「健康」を意味するイタリア語です。心身の健康を獲得できることを目的としたブランドで、健康と美容に関する様々な情報を発信しています。

読書もまた、心の健康に欠かせないもの。エンジョイブックスでは、心が豊かになる本をご紹介していきます。

🔍 サルーテ公式サイト:https://health-salute.com/

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